第7回
電子実験ノートによる
データインテグリティ対応のまとめ
これまで当コラムでは、データインテグリティの基礎から始め、電子実験ノート(以下、ELN)を中心としたデータインテグリティ対応について解説しました。
そこで今回は、ELNによるデータインテグリティ対応の総集編として、ポイントをおさらいしてみましょう。
ELNはALCOA原則をどう満たすのか!?
そもそも、データインテグリティの要件を満たすかどうかは、何を基準に判断できるでしょうか?
ひとつの分かりやすい基準としては「ALCOA原則」があります。(第1回いまさら聞けないデータインテグリティ!~ポイントを解説します)
ALCOA原則に照らし、ELNがどのように対応できるかについてまとめたのが以下となります。
それぞれの要件について具体的にELNのどの機能がデータインテグリティ対応を支援できるか、見ていきましょう。IDBS社ELNのE-WorkBookを例に挙げてご説明します。
「帰属が明確であること」を担保するのは、本質的にはELNの使用にかかわらず、普段皆様がお使いのPCのアカウント(IDとパスワード)運用の適性さです。通常は、Active Directoryと連携させ、ユーザの特定・識別を社内ルールに則って運用されています。これにE-WorkBookのアカウントと連動させることで、ELN情報の実験データは、誰が記録し、どこから得たデータかを明確に特定できるようになります。
E-WorkBookでは、電子データで取り込むため、文字や数字が読みやすい状態で保存されていきます。基本的には、手書きのノートでは「後で見返すと文字が読めない。」といったことがしばしば起こりますので、この点ではE-WorkBookが優れていると考えられます。
さらにデータインテグリティにおいて重要なのは、履歴を遡ると生データを再現できることです。これは、E-WorkBookのAudit Trail機能により、生データに対しどのような加工(計算や解析)が施されたか履歴を追跡できるため、取り込んだデータだけでなく、一連のデータの流れを通じて判読可能な状態となります。
「データの作成と同時に記録されること」の実現は、データの発生源、例えば生データの場合は測定する機器によって難易度が変わります。電子天秤やpHメーターなど計測機器では、RS232CやUSB接続が可能なため、比較的同時性が高い条件でデータが記録されます。一方、テキストデータをE-WorkBook標準機能でインポートする方法では、人の手が介在するため、正しく取り込むためのSOPも必要でしょう。この中に、例えば測定結果を取り込むタイミングをルール化することで、同時性を上げることができるのではないでしょうか。
E-WorkBookには、ファイルの原凡性を確保する機能が備わっています。
それは、E-WorkBookにマイクロソフトオフィスドキュメントやPDF、画像などの原本ファイルを、丸ごとノート画面に取り込む機能です。また画像など容量が重いファイルは、ファイルサーバーにある原本にリンクを貼ると、生データとの関連付けが行えます。
正確性を示すためには、E-WorkBookなどELNシステムだけではなく、業務全体の運用、つまりSOPの整備も必須となります。また、コンピュータ化システムバリデーション(CSV)を実施することで、導入システムの正確性が担保されることになります。
このようにELNを導入することでデータインテグリティ対応の核となるところを支援できるようになります。
切り離せない関係にあるアプリケーションとインフラ
ELNなどのアプリケーションを利用するエンドユーザーにとって、普段インフラを意識することは少ないでしょう。しかしシステムとして考えると、本来アプリケーションとインフラは切り離せない関係にあります。そのため、データインテグリティ対応では、この両面から同時に検討していくことが重要となります。
それでは、次回からインフラによるデータインテグリティ対応について解説していきます。
電子実験ノートシステムE-WorkBook について
E-WorkBookは電子実験ノートプラットフォームです。試験単位で関連データやファイルの作成・管理ができ、部門やプロジェクト間のデータ共有が行えます。21 CFR Part 11 対応ソリューションであり、セキュリティやバージョン管理の完備、電子承認やタスク管理もできるため、ファイルサーバーの発展形としてもお使いいただけます。
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