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第1回
いまさら聞けないデータインテグリティ!
~ポイントを解説します

まえがき - データインテグリティの基本を3分で知る

製薬業界でお仕事をされているみなさまは、これまでに一度は「データインテグリティ」の文字を目にしたことがあるのではないでしょうか?

2015年に海外規制当局MHRA(医薬品・医療製品規制庁)が初めて、データインテグリティに関するガイダンスを発行して以来、急速にデータインテグリティが注目を浴びるようになりました。

疑問を感じる女性

GMPやGCPなど査察に関わっている方を除くと、どんどんこの用語が広まってはいるものの、日々多忙ななかデータインテグリティを知る機会がなく、現在に至っている・・・という方も珍しくないのではないでしょうか。

それでは、ここでデータインテグリティとはいったい何か?簡単に解説します。

データインテグリティは、日本語の「データの完全性」に置き換えられます。

・・・というと、なんだか難しそうに聞こえるかもしれません。

しかし、データインテグリティの概念はいたってシンプルです。その考え方は、実は昔から、どの製薬企業でも守らなければいけないこととして認識されてきたものです。

データインテグリティは、データのライフサイクルを通じて完全で一貫性があること。データのライフサイクルとは、生データ(最初に記録されるデータ)⇒転記された1次データ⇒解析など加工が施された2次以降のデータ⇒当局への申請データ、この一連の流れを指します。このライフサイクルにおいて、データインテグリティの観点で最も重要なのが、機器から出力された生データ(最初に記録されるデータ)を管理することです。「申請データから前の段階のデータへ遡るプロセスを完全に証明できる=データの改ざんがない」といった点が、査察でチェックされるのです。

でも、それって「できて当たり前のことじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。

そこなのです!「既にどの製薬企業でも、できているはず。」-数年前まで規制当局もそう考えていました。

それが、2013年以後の製薬業界では、FDAなど海外規制当局による査察で、データインテグリティに関する不適合の指摘が急増しました。そのため、MHRAやFDAなどの海外規制当局が、あらためてデータインテグリティを定義し、相次いでガイダンスを発行したのです。こうした規制強化を受け、データインテグリティは古くからあった概念にもかかわらず、最近はどの製薬企業でも対策に乗り出しています。具体的には、データインテグリティを保証する手段の一つとして、分析データの維持・管理、標準業務手順書(SOP)の見直しなど実行に移すケースが増えています。

そして、分析データの管理において、ITシステムは重要な役割を担っています。それはまた次回にご説明します。

以上、データインテグリティを簡単にご説明しましたが、いかがでしょうか?ご理解いただけたでしょうか?


※ もう少し余裕のある方は、ここでは詳しく述べませんが、データインテグリティの要件であるALCOA原則もおさえておきたい用語です。

  1. Attribute(帰属/責任の所在が明確である)
  2. Legible(判読/理解できる)
  3. Contemporaneous(同時である)
  4. Original(原本である)
  5. Accurate(正確である)

引用:http://www.jpma.or.jp/about/board/evaluation/allotment/ chiken_hinshitsu.html

CMC分野のデータにまつわる一般的な課題とは?

データインテグリティが、GMPやGCPなど査察時にチェックされる重要ポイントだということは、すでにお話しました。それでは本題である、データインテグリティがCMC分野にどう関係するか考える前に、CMC分野におけるデータ管理の一般的な課題についてみてみましょう。

課題は、「業務効率化」と「規制要件への対応」の大きく2つに分けられます。

CMCとは、工業化生産検討のための合成、製剤、分析にかかわる業務全般をいいます。なかでも分析業務では、HPLC、質量分析、熱分析などさまざまな分析機器が使用されています。

まず「業務効率化」についてです。

最近、我々は、CMC部門のお客様から、システム導入に関するご相談が増えました。ご相談内容で特に多いのが、QCチェックの労力を削減したいといったお悩みです。

例えば、分析機器から出力された生データを、解析・レポートするためには、Excelなどの電子ファイルに、目視で生データを見ながら手動で転記しなければなりません。そのため、転記ミスがないかQCチェックを受ける必要があります。しかし、そのチェックもまた人海戦術で行われます。転記したExcelファイルを印刷して、信頼性保証担当が印刷した紙と生データを見比べながら、レ点を入れつつ、QCチェックするというのが大変な手間だそうです。「なんとか、QCチェックの負荷をシステムで解決できないか?」という切り口から電子化にご興味を持たれるケースが増えています。こういった要望は、IT部門に限らず、現場の方から直接相談を受けることも多いです。

何かを書き込む白衣姿の女性

そもそもCMC部門でも紙の実験ノートを使われていることが多いですが、実験ノートは机の引き出しや書庫に保管されます。レアケースですが、席替え時に実験ノートをダンボールに梱包したまま開封していないという方もいらっしゃいました。普段は良いのですが、何かが起こり、過去の情報にさかのぼりたいときに、記憶に頼りつつページをめくって探すというのは、かなり大変な作業です。探している情報が見つかれば良いのですが、見つからなかったとき、最悪のケースでは再実験を余儀なくされることもあります。

このように、実験データをすばやく検索できるような仕組みを持ち、研究者間や部門間での情報共有を改善したいという、どの分野にも共通のお悩みは、CMC部門にも例外なくあてはまるのだと言えます。業務効率化は、まさにシステム導入に期待されている点といえるでしょう。

次に「規制要件への対応」という外的要因には、どのような課題があるでしょうか。

2015年7月、日本がPIC/Sに加盟して以降、製造承認前の査察が強化されました。CMC分野(非GMP及びGMPの両方)で保管される実験情報や手順書、品質記録では、まだまだ紙が活躍しています。但し紙の場合は、電子データよりも文書や記録類の保管管理に手間がかかり、文書のライフサイクルマネージメントが煩雑になりがちです。査察時に、査察官の前で、必要な情報を提示することでさえ、容易にできないこともあります。PIC/S加盟により、厳しくなりつつある査察において、現状の紙での運用を懸念されてのご相談が増えてきました。

クオリティ・バイ・デザイン(QbD)アプローチの適用による製剤開発もまた、生成・管理するデータに大きな影響を与える要因です。QbDでは最終的に製造された医薬品の品質だけでなく、製剤設計から製造工程までのプロセス全体が評価されます。PAT(Process Analytical Technology)を用いた工程モニタリングの導入は、最終製品の品質保証のみならず、リアルタイムに製造中の原材料や中間生成物の品質や性能を計測するため、膨大な分析データが生成します。それらの解析データ含めデータ管理には専用ソフトウェアが使用されています。しかし、規制に適合したソフトウェアの公正な運用も、課題の一つでしょう。

そして重要なのが、データインテグリティですが、これは次回にご説明します。

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