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CMCデータインテグリティ

第5回
測定機器から出力された生データに改ざん防止策は取られていますか?
また解析の過程を遡れば、生データまで戻れますか?

前回は、電子天秤の秤量値記録におけるデータインテグリティ対応を解説しました。そこで今回、より複雑な運用をされている、測定機器の出力データの信頼性担保について深堀してみましょう。

測定機器の出力データは、複雑なプロセスを経ながら、解析・加工されている

CMC領域の研究では、HPLCやUPLC、GC、MS、プレートリーダーなど各種分析用の測定機器が用いられます。このような機器は、居室から離れた共同利用施設に設置されており、研究者はそこに移動して使用しているケースが多いのではないでしょうか。

このような測定機器の出力データ運用には、どのような課題があるでしょうか。
下図は、一連の業務流における課題を可視化しています。各課題がどのようなリスクを招く恐れがあるのかについて、これから順番にご説明します。

図1:測定機器データのデータインテグリティ対応の課題
図1:測定機器データのデータインテグリティ対応の課題

測定機器から出力された測定結果である生データは、先ず機器に接続している専用PCに出力されます。研究者は、このPCにインストールされている機器専用解析ソフトウェアで、生データを解析したり、生データをテキストやExcelなど可読可能な形式に変換します。これらは既に加工が施された状態のため、もはや生データではなく、一次データとなっています。しかし、作業が行われた機器専用PCは、社内ネットワークに接続していないケースが多いです。そのため、個人用PCにデータを持ち込みたいときは、研究者が保有するUSBメモリに一次データをコピーしてから移すしか手立てがありません。

これまでのプロセスにはデータインテグリティ遵守の観点では様々なリスクが潜んでいます。

先ずは機器専用PCの脆弱性がございます。ALCOA原則を当てはめた場合、機器専用PCに保管されている生データはおそらくALCOA原則のほとんどが達成できません。例えば原本性の確保という観点で改ざん防止策、監査証跡機能が機器専用PCに相応の機能にあるとは思えませんし、帰属の明確化や「誰の」生データなのかの証明に関しても難しいと考えられます。また、煩雑な状態で生データが蓄積・管理されているため、いざ必要になったときに、すぐに生データを探し出せないといった状況が、業務効率低下を招きます。(図1-①)。そもそも機器専用PCはネットワークに接続されていないことが多いので、研究者の個人用PCにデータを移す際に、USBメモリを用いることでデータの紛失(図1-②)や目視による転記ミス(図1-③)が発生するリスクも潜んでいます。

では、機器専用PCが社内ネットワークに接続されていた場合はどうなるでしょうか。機器専用PCから部門管理のファイルサーバーに生データがコピーして運用していたとします。しかし、このファイルサーバーへのアクセス権限が適切に管理されていなければ、不用意に生データを編集したり、削除したりした時点で、データインテグリティは破たんします(図1-④)。このように、部門管理のファイルサーバーによる生データ管理では、厳重な権限や運用ルール設定をしない限り、安全とは言えません。

また無事に、生データを個人用PCにコピーしても、研究者個人がきちんと管理していないと、どれが最新のデータか分からなくなってしまうこともあるでしょう(図1-⑤)。そして、監査証跡(Audit Trail)機能がない解析用ソフトウェアやMicrosoft Officeでデータの編集・解析を行った場合、変更履歴が記録されません。そのため、気が付いたら生データへ辿るのが困難な状態になっていたというリスクも想定されます。(図1-⑥)。

このように、測定機器からの出力データは、複雑な過程を経て加工が進められており、データインテグリティのリスクが多く潜んでいると考えられます。

こうした課題に対し、CFR Part11対応をしたソリューションを組み合わせて運用するのが有効だと考えられます。弊社では電子実験ノート(ELN)との組み合わせを推奨しております。

ELN活用で、生データ管理と解析過程の記録が万全に

それでは既存の業務フローにELNを導入すると、どのようにリスクが軽減するでしょうか。ELN導入後の運用イメージを下図に示しました。

図2:ELNを利用したデータインテグリティ対応 図2:ELNを利用したデータインテグリティ対応

第一に、機器専用PCを社内ネットワーク環境に接続するインフラ整備が重要であり、必須だと考えます。そしてCSV対応したファイルサーバーを導入し、アクセス権管理(例えば閲覧のみ許可の設定)を厳密に施して、生データを一元管理することで、セキュアな生データ保管が行えます(図2-②)。測定機器から生データを転送する方法は、いくつかあります。自動転送したい場合は、バッチスクリプトを組むことで実現します。自動に拘らない場合は、生データをファイルサーバーに手動でコピーしますが、格納するタイミングや場所はSOPで規定する必要があるでしょう(図2-①)。このファイルサーバーは、一度書込んだら編集不可とするなど適切に権限設定することで、生データは改変ができない状態で維持されます。ファイルサーバーの詳しい機能については、同コラム「インフラソリューション」パートでご紹介します。

次にデータインテグリティにおける、ELNの果たす役割に迫っていきます。

ELNのコンセプトは、実験記録とデータの電子化です。生データをELNに張り付けるだけで、いつ誰が何を記録したのかが明確になり、改ざん防止機能もあるためALCOA原則の大半を遵守する事が可能です。しかし、全ての生データをELNのノート画面に保存するというのは現実的ではありません。生データは、データ容量が大きい場合があります。このような大容量データは、ファイルサーバーに保管した状態で維持し、ELNから生データ保管場所へのリンクを追加することで(図2-③)、いつでもノート画面から生データまで辿れるようになります。またノート画面に、生データを生成した測定条件や解析データを保管しておくことで、生データを中心としたデータの一貫性が保たれることになります(図3)。

図3:IDBS社電子実験ノートシステム E-WorkBookにおけるファイル運用・管理イメージ 図3:IDBS社電子実験ノートシステム E-WorkBookにおけるファイル運用・管理イメージ

ELNによるデータ一括取り込みで転記エラーを防止

ELNの中でもとりわけE-WorkBookには、データインテグリティを強力に支援する標準機能が提供されています。電子天秤、電子ノギス、HPLCやプレートリーダ―はSDMSなどと連携し、生データをELNにダイレクトにインポートできます(図4)。これにより、手動による転記が不要になるため、QCチェックの簡略化につながり、研究業務効率も向上する事が期待できます。しかしこの機能を利用した場合でも、ファイルの選択や使う電子天秤の選択を誤ってはいけません。一連の業務で、人の手介在するポイントについては信頼性担保するために、SOPの設定は必要になるでしょう(図2-④)。

図4:E-WorkBookのデータインポート機能 図4:E-WorkBookのデータインポート機能

機器データのインポートでも、ELNの監査証跡が記録されます(図5)。生データが取り込まれたSpreadsheetで、どのような解析・変更が行われたかセルレベルで記録されます。そのため、Excelで追えなかった解析の過程が記録されるため、データインテグリティ対応が支援されます。(図2-⑤)

図5:E-WorBookのAudit Trail機能(セルレベルで変更値が記録)
図5:E-WorBookのAudit Trail機能(セルレベルで変更値が記録)

このように、ファイルサーバーやELNなどシステム導入により、運用も見直されることになります。それが結果的に業務フローを簡素化し、効率性を増すことにも繋がります。システム導入は、標準機能による恩恵を受けるだけでなく、業務全体に良い効果をもたらすことにもつながると考えられます。

さて次回は、顕微鏡やデジカメによる撮影画像のデータインテグリティを解説します。

電子実験ノートシステムE-WorkBook について
idbs

E-WorkBookは電子実験ノートプラットフォームです。試験単位で関連データやファイルの作成・管理ができ、部門やプロジェクト間のデータ共有が行えます。21 CFR Part 11 対応ソリューションであり、セキュリティやバージョン管理の完備、電子承認やタスク管理もできるため、ファイルサーバーの発展形としてもお使いいただけます。

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