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日本新薬株式会社 合成計画策定時から法規制化学物質の合成リスクを未然に防止 システムによる法規制チェックが、研究者の欠かせない日常業務に

  • 日本新薬株式会社
    創薬研究所 探索研究部
    尾田 明博 様

「健康未来、創ります。」を企業スローガンに掲げる日本新薬株式会社(以下、日本新薬)は、高品質で特長のある医薬品の創出を目指すうえで、担当取締役や部門責任者がコンプライアンス推進を統括管理し、化学物質のリスク対策や適正管理に特化した専任組織を立ち上げるなど、全社的に高い意識でコンプライアンスに取り組んでいます。
2008年の日本製薬団体連合会(以下、日薬連)による「麻薬等に該当する物質の管理に関する調査について」の通知を受けて、いち早く対策に向けて動き出した同社は、翌年には、CTCLSが開発・提供している法規制化合物チェック支援システム「RegSys」を導入し、自社保有化合物のコンプライアンス徹底の運用を確実なものにしました。更にその3年後には、RegSysとBIOVIA社電子実験ノート「BIOVIA Workbook」の連携システムを合成部門に展開。法規制チェックなしでは新規化合物合成を先に進ませない機能を盛り込んだ同システムによって、誤って法規制化学物質を合成するリスクを排除しました。

課題と効果

  • Before
    • 課題①
      新規合成化合物については、合成計画策定時に、研究者の目視と手作業により法規制チェックを行うなど、研究者の知識と経験に委ねられていた。
    • 課題②
      法令改正時には、過去のデータ(合成化合物や保有試薬)を遡及して、迅速に法規制チェックをする必要があるが、高まる法規制改定の頻度に伴い困難さが増していった。
    • 課題③
      合成計画時に、最終生成物だけでなく、用いる試薬や合成中間体についても法規制チェックする必要があるが、一つ一つの法規制チェックに非常に手間がかかっていた。
  • After
    • 効果①
      ITシステムによる法規制チェックにより、属人性を排除でき、常に一定の基準に基づいたコンプライアンスを維持できるようになった。
    • 効果②
      RegSysを用いると、最新の法令で大量の化合物に対して一括で法規制チェックができるので、遡及対応が可能となった。
    • 効果③
      電子実験ノートとRegSysを連携させることで、最終生成物だけでなく、合成反応経路に含まれる試薬や中間体など全ての化合物について、網羅的な法規制チェックができるようになった。

導入の背景・経緯

法規制化学物質の適正管理に関する通知を受けて、すぐさま化合物のコンプライアンス対策の検討が始まった

  • ・2008年の日薬連による「麻薬等に該当する物質の管理に関する調査について」の通知を受けて、日本新薬はすぐさま購入試薬だけでなく、新規合成化合物のコンプライアンス対策を検討開始するなど、素早くアクションを起こした。
  • ・コンプライアンス対策として、法規制化学物質の不法所持・不法製造の未然防止を目的とした、全社的な法規制対象物質をチェックする仕組みの構築が必須と判断した。

日薬連の通知の以前から、化合物のコンプライアンスに向けたITシステム活用を意識

  • ・現場研究者のニーズにより、購入試薬の法規制情報管理に市販の試薬管理システムを導入しており、コンプライアンス対応策として早い時期からITシステム活用に着目していた。
  • ・新規合成化合物については、合成計画策定時に、研究者の目視と手作業により法規制チェックしていた。しかし万全な法規制チェック体制を構築するには、研究者の知識や経験に頼らないシステムが必要と考えられた。
  • ・法令改正時には、過去のデータ(合成化合物や保有試薬)を遡及して、迅速に法規制チェックをする必要があるが、高まる法規制改定の頻度に伴い困難さが増していった。
  • ・研究者の知識に加え、麻薬四法などに関する法規制情報を格納したISISデータベースを自社で手作りし、それに基づいて法規制チェックをしていたが、対象となる法令や規制物質が増えるにつれ、作業負荷が課題となっていった。

化合物のコンプライアンスを推進する専任組織「化学物質等管理委員会」の立ち上げ

  • ・研究開発の担当取締役を委員長とし、各部門の所長や部長から構成される、化合物のコンプライアンスを全社的に統括・推進する専任組織である「化学物質等管理委員会」を立ち上げた。
  • ・同委員会が中心となり、化合物のコンプライアンス徹底に向けた方針の決定やアクションプランを作成し、日本新薬が保有する全ての化学物質を最新の法令に従い全社的に適切に管理する具体策が検討されてきた。この中で、ITシステムを活用する案について合意が得られた。

導入製品を選択した理由

高精度な法規制チェック機能や電子実験ノートとの連携を見据えてRegSysに決定

  • ・CTCLSが開発した法規制化合物チェック支援システム「RegSys」は、「漏らさず規制物質を検出できること」や「誤検出(ノイズ)が出来るだけ少ないこと」などチェック精度に関する厳正なシステム選定基準をクリアーしていた。薬物四法を対象とし、自社保有化合物を用いた性能評価でも、申し分のない精度だと確認できた。
  • ・RegSysは、旧MDL社(現BIOVIA社)のケミカルカートリッジに対応しており、当時、自社合成化合物を管理していたISISデータベースに直接アクセスしてチェックできるため、手作業だった運用負荷を大幅に軽減できる点が、導入の大きな決め手となった。
  • ・RegSysでは、単一化合物だけでなく大量の化合物データを一括チェックできるシステム構成(RegSys Librarian)も提供されており、懸案となっていた法令改正時の遡及対応が解決できる。そのため、頻度が高まりつつある法令改正時に必須となる大量の自社保有化合物全てに対する遡及対応を、迅速に負荷を掛けないでできる点が日本新薬にとって有用な特長だった。
  • ・BIOVIA社ケミカルカートリッジに対応しているRegSysは、同社が提供する各種システムとの親和性が高く、当時計画していた電子実験ノートとの連携においてメリットが大きかった。

ハードウェアも含めた、CTCLSのトータルサポートが魅力だった

  • ・CTCLSからは、RegSysだけでなく、同システムを構築した環境に含まれるハードウェアやソフトウェア、またISISデータベースについても、トータルでサポートが受けられる点が魅力だった。また、サポートの問い合わせ窓口が大阪にもあるため、対応が早いなど、CTCLSが提供する運用サポートがしっかりしていて安心感が持てた。

導入のポイント

2009年4月末~7月 RegSysの環境構築に並行して、運用ルール策定に注力

  • ・合成研究者の合成計画策定時におけるコンプライアンスチェックにはRegSys Webを、また事務局の試薬化合物などの一括チェックにはRegSys Librarianを、目的に応じて最適なシステム構成を選択した。
  • ・RegSysの導入では、カスタマイズ不要で、スムーズにインストール、環境構築できた。
  • ・RegSysの環境構築と並行して、現場の研究者の日常業務に、法規制チェックがしっかりと定着するよう、運用ルールの策定には最大限に時間を掛けた。
  • ・RegSysの運用ルール策定では、先ず化学物質管理委員会が方針を決め、現場から選抜された数名の研究者が、業務に即した実務的な運用ルールを検討し、両者が相談しながら結論を出すようにした。
  • ・決定した運用ルールは、各部門長経由で現場の研究者に周知徹底されたため、確実な法規制チェックが浸透した。

2009年8月~ 創薬研究所全体での運用開始、合成前後2回に及ぶ法規制チェックなど、取りこぼしのない運用ルールの盛り込み

  • ・創薬研究所(京都府京都市)と東部創薬研究所(茨城県つくば市)でRegSysの運用を開始した。これ以降、全ての新規合成化合物の合成計画策定時には、法規制チェックが必要という運用ルールにした。ISISデータベースへの合成化合物を登録させる際に、RegSysでの法規制チェックの結果も必須項目として入力させるようにした。
  • ・合成計画策定時と合成後のISISデータベースへの合成化合物登録時の2回、ダブルチェックを目的として法規制チェックする運用ルールにした。これにより、未然防止策としての合成計画策定時はもちろんのこと、想定外で合成された化合物も取りこぼさず、事後チェックできるという工夫をした。
  • ・本番運用前に、部門単位でトレーニングをした。RegSysの操作は、シンプルで覚えやすく、1回のトレーニング(1時間程度)で現場の研究者は使い始められた。
  • ・日常業務の中で、法規制チェックが必要なタイミングや警告が出た時の対処方法など、現場の研究者が疑問に思うポイントを想定し、運用ルールに盛り込み、周知徹底した。
  • ・事務局による、試薬ベンダーから購入する試薬の一括チェックについても、同時に運用開始させた。
  • ・現場の研究者と事務局とで、法規制チェックにおける役割を明確に分け、蓄積された自社保有化合物(試薬や合成化合物)については事務局が、法令改正時に一括チェックをするなど、万全なコンプライアンス体制を整備し、化学物質の適正管理の推進、充実を図った。

2011年8月 更なるコンプライアンス強化に向けて、電子実験ノートシステムとRegSysの連携システムを立ち上げ

  • ・BIOVIA社電子実験ノートシステム「BIOVIA Workbook」を創薬研究所の合成部門に導入し、RegSysと連携させることで、合成計画策定時の法規制チェックの利便性向上を図った。

導入の効果

日本新薬株式会社
創薬研究所 探索研究部
尾田 明博 様
  • RegSys導入と共に法規制チェックの運用が定着し、部門の隔たりなく一定のコンプライアンスレベルへと平準化できた。
    また、RegSysを単体で利用するよりも、電子実験ノートと連携させて利用した方が、遥かにメリットが高い。

BIOVIA WorkbookとRegSysの連携システムが、強力なコンプライアンス対策に!

  • ・合成計画策定時に、最終生成物だけでなく試薬や合成中間体についても、BIOVIA Workbook上で法規制チェックできるので、網羅性が強化され、業務効率化にも繋がった。
  • ・BIOVIA Workbookに入力した合成反応経路中に含まれる化合物で、法規制物質がヒットすると、真っ赤な警告画面が表示されるため、研究者にとって分かりやすくまず見落とすことはない。
  • ・システムの運用上、RegSysでのチェックを掛けないと先に進めないよう、電子実験ノート上に化学反応プロセスを記入できない機能をカスタマイズで盛り込んでいるので、合成計画策定時には漏れなくコンプライアンスチェックができている。RegSysの標準機能以上のコンプライアンス対応をシステムで具体化した。
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プロセス合成業務にも利用拡張させることで、更に万全なコンプライアンスへ

  • ・2015年、BIOVIA Workbookのバージョンアップに伴い、原薬部門へもRegSysと連携したBIOVIA Workbookを導入した。これにより、原薬部門にいるプロセス合成の研究者にも、法規制チェックの運用を拡大できた。
  • ・探索合成とプロセス合成の研究者が、合成計画策定時に同じプラットフォームを使用しているため、互いに登録した情報を参照しながら、合成経路を計画する段階で情報共有できるようになった。探索合成と異なる合成経路でスケールアップする場合に、想定される合成化合物についても法規制チェックでき、コンプライアンスが更に充実した。

今後の展開

将来の生物系やCMC・製剤分析など、電子実験ノートの適用領域拡大に伴い、更なるコンプライアンスの充実を図る

  • ・将来、生物系やCMC・製剤分析など他部門に、電子実験ノートを横展開していく際に、RegSysも連動させた利用拡張を検討する。
  • ・労働安全衛生法のリスクアセスメントにも対応していく。
  • ・CTCLSからのサポートは、社内化合物管理システムをISIS/HOSTから新システムへの移行の際にも大変役に立った。
  • ・創薬研究分野のシステム提供に強みを持つCTCLSには、今後も各種システムを連携したソリューションや業務に即した先進的な提案を期待している。
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導入企業様の情報

日本新薬株式会社

本社住所
日本新薬株式会社
〒601-8550
京都市南区吉祥院西ノ庄門口町14
URL
http://www.nippon-shinyaku.co.jp/ window open

※部署名、役職名、その他データは、取材時(2016年10月25日)当時のものです。

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