【自社解析事例】日本の英語学習法のトレンド<パート3>

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2021.03.26

CTC3名のデータサイエンティストによるAIを用いたテキスト解析事例「日本の英語学習法のトレンド」<パート2>の分析で得られた英語学習のトレンドをおさらいします。

  • 毎日続けられる英語学習法には、楽しめる要素が求められる。
  • 英語日記をブログに投稿したり、海外ドラマ・映画でリスニング練習したりすることで、楽みながら毎日の学習を継続している。
  • 英語学習には、専用アプリやNetflix、Google Chrome拡張機能などデジタルツールの利用が普及してきている。
  • コロナ禍で、オンライン英会話レッスンが活況となってきている。

このようにAIを用いたテキスト解析エンジン「Quid」により、デジタル化社会を反映した英語学習法のトレンドがあぶり出されました。このデジタル化の波は、日本の英語教育にどのくらい影響を及ぼしているでしょうか。またそれは、具体的にどのような影響なのでしょうか。

AIを用いたテキスト解析事例「日本の英語学習法のトレンド」最終回では、これらの疑問を解決するため、最新の日本国内における英語教育の傾向を探ってみます。

インプット型→アウトプット型学習への転向

過去1年間(2020年2月~2021年1月)の英語学習に関する、日本語記事やSNS投稿情報から集めた分析用データセット約15,000件を、Quidで分類したネットワークマップに戻ります。

ネットワークマップには、「発音練習」や「大学,受験,留学,研究」と英語の学習分野や教育に関するワードが並んでいるクラスターが形成されていました(下図赤枠)。

ネットワークマップ

これらネットワークマップの内部には「アウトプット,インプット,繋がり」というクラスターが存在していました。そこでこのクラスターに注目して拡大してみると、黄色のノードで表示される「アウトプット,インプット,繋がり」は、他の多くのクラスターと線で繋がっていることがわかります(下図)。これは多数のトピックに関連していることを意味します。そのため、アウトプットインプットは、英語学習におけるあらゆる情報において共通しているキーワードと考えられます。

「アウトプット,インプット,繋がり」というクラスター

分析を担当した40代のデータサイエンティストは、中学と高校の6年間、文法の学習をしましたが、英会話の授業はありませんでした。また学生時代の受験勉強では、参考書を読みながら英単語や英文法を丸暗記した記憶があります。そのため、従来は明らかにインプット型だった学習法が、Quidのトレンド分析によると、最近は「アウトプット型」に転向してきていることが分かります。

「アウトプット型」学習の代表格が「発音練習」です。このクラスターの中に、象徴的な投稿を見つけました(下図赤枠)。

「発音練習」クラスター内の象徴的な投稿

ツィート例:

日本人の英語学習に圧倒的に足りない訓練は「英語を口に出して練習する」

脳の学習は出力依存、英語の学習は口に出さなきゃ

このようにインプット型では、英語学習の定着率が劣ると考え、「口に出す」など、意識してアウトプット型にしている学習者の工夫が見られます。「自分の英語発音を録音して聞く」ためのアプリ使用など、ここでもデジタルツールが活躍しているようです。

驚くべきことに、インプット型学習が多いと予想していた文法の学習も、アウトプット型に切り替えようという投稿が見られました(下図赤枠)。

文法の学習もアウトプット型に切り替えようという投稿

進む英語教育の低年齢化

そもそも英語を学習する目的とは何か。その疑問に答える、大きなクラスター「大学、受験、留学、研究」が形成されていました。高校・大学受験で英語は、進路にかかわらず必須の受験科目として、学習されているケースが多いのが事実です。

大きなクラスター「大学、受験、留学、研究」

しかし、それ以外にも「小学校,中学校,高校,幼児,子供」という、その中で「保護者と一緒に子供も英語学習」が可能な、オンライン英会話を受講するといった、低年齢化を象徴するクラスターが形成されています。グローバル化が進む昨今、英語力の重要性を認識している保護者が、子供が低年齢のうちに英語学習を開始している傾向が伺えます。

「小学校,中学校,高校,幼児,子供」の検索結果

また子供のための、ネイティブスピーカーによる英会話レッスンや市販の教材が多数ヒットしました。英語学習法の選択肢が増えていることから、数十年前と比べると、現在は英語教育の低年齢化が進んでいると言えるでしょう。

英語教育の低年齢化

グローバルの次世代ワードを発見!?

このように分析を進めていくと、見慣れないキーワードである「グローカル」を発見しました(下図赤枠)。

見慣れないキーワードである「グローカル」

このキーワードに興味を持ったため、「グローカル」についてインターネット検索で、どのような意味を持つのか調べてみました。

グローカル(Glocal)とは、「地球規模・世界規模」を意味するグローバル(Global)と「地元・地域」を意味するローカル(Local)という2つの英単語を組み合わせた造語だ。主にグローカルな事業やグローカル化、グローカル人材などと使われる。このグローバルとローカルのいいとこどりをするのがグローカルだ。世界規模に展開・通用する考えで、地域の文化や慣習に向き合い、社会のニーズに合った貢献をすることを指す。

引用:「グローカルとは・意味」

つまり造語で、グローバルとローカルの両方の良いところを持ち合わせた概念ということです。更にグローカル化という言葉も使用されていることが分かりました。

グローカル化(英: glocalization)は、全世界を同時に巻き込んでいく流れである「世界普遍化」(globalization)と、地域の特色や特性を考慮していく流れである「地域限定化」(localization)の2つの言葉を組み合わせた混成語である。カタカナでグローカリゼーションと書くこともある[1]。俗に言う、「地球規模で考え、足元から行動せよ」(Think globally, act locally.)とも関連する言葉。

引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

今回Quid中では、クラスターの形成には足りないほど「グローカル」に関連する情報が少なかったため、現時点ではトレンドにはなっていないと考えられる。とはいえ、ウィキペディアに掲載されていた事実は、有識者の存在を示唆するため、今後トレンドとなる可能性を秘めています。

グローバル企業やグローバル人材といった表現が、次世代にはグローカル〇〇へと進化していくと予想できるのです。

グローカルな未来

分析を終えて

これまでCTC3名のデータサイエンティストによるAIを用いたテキスト解析事例「日本の英語学習法のトレンド」を3回に分けて、ご紹介しました。

今回の分析では、英語学習に関する膨大なテキスト情報を、AIが文脈を読み解き、全体像を把握してから、内容の類似性で分類してみました。

全体像を俯瞰してからでないと、何がトレンドであるか相対的に把握できなかったこと、そもそもインターネット検索で情報を深堀するための切り口=検索キーワードが、AIの使用なしでは見つけられなかったことが、一連の分析を終えて得られた気づきです。

分析に用いたQuidの場合は、常に最新のニュースやブログ、SNSデータに接続して分析を行うため、1か月後など時間をいて分析すると現在のトレンドから変化することはあり得ます。

現在のメジャーなトレンドが縮小し、別のトレンドの浮上を把握できれば、トレンドの変化をキャッチアップで来ていると言えます。そのため分析を行ったタイミングにより、形成されるネットワークマップやクラスターの分類結果や、各クラスターの情報が占める割合の%は、常に変動すると考えた方がよいでしょう。

たった1回の分析で「なぜこのような分類になったか」という理由や%算出(下図)の根拠を追求するよりも、Quidを用いることで、興味のあるテーマについて定点観測しながら、経時的にトレンド変容を追えることに価値があると考えました。相対的な変化を把握することがまた、インサイト(洞察)を導き出すことになり得るのです。

クラスター別色分け

最後に、このようなTwitterの投稿を見つけました。

Twitterの投稿

AIの発達により英語学習が不要になる時代到来は間近なのかもしれません。今回の分析で英語学習法トレンドを得たところで、上記の投稿を見て「英語学習を続けるべきだろうか…」という迷いが出てきそうです。そうした迷いが生まれてきたら原点に戻り、AIはバイアスを掛けず多角的な視点から選択肢をサジェストし、人間の意思決定を補完するツールという位置付けを再認識しましょう。答えを決めるのは人間です。なぜならば、AIの利用者・解析者に最適な答えは、目的や求める志向などにより左右されるからです。この例では、なぜ英語を学習するのかという目的が決め手となります。
ビジネスで使用するからか?または、海外の人々と交流するからなのか?

前者では「AIによる翻訳で効率化できれば良い=英語力は現状維持で十分で英語学習の必要はない」、後者では、「肉声で英語を話したい=積極的に英語学習に取り組む」といった判断ができるのではないでしょうか。目的により導き出す答えは異なるのです。

AIの活用メリットを享受しつつ、より良い意思決定ができるようになれば「AIを使えるようになった」と自信を持って言えるでしょう。

AIを使用した言語学習

この事例が、今後AIを活用する皆さまのご参考となりましたら幸いです。

<終わり>

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