【自社解析事例】2020年ボランティア活動のトレンド分析からモチベーションを探る<パート1>

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2021.01.25

今回の記事では、CTCによるAIを用いたテキスト解析事例をご紹介します。

解析したテーマは「2020年に行われたボランティア活動」について。

皆さまは、「(主に金銭的な)報酬を期待せず」に行われるボランティア活動に参加されたことはあるでしょうか。

実に幅広い年齢層の人々が、ボランティア活動に積極的に参加することで、社会が支えられています。しかし、この多忙な現代社会では、学業や仕事など自身のやるべき事で、時間が埋め尽くされているなか、「報酬の無いボランティア活動に参加するモチベーションとはいったい何だろう?」という疑問を持たれた方はいないでしょうか。

そして、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に多大なる影響を受けた2020年。ボランティア活動参加への動きに変化が見られたかも、気になります。

そこでこれらの疑問に対し、CTCの解析チームが、ニュースやソーシャルメディアの投稿情報を読み解くことで、様々な視点で解析してみました。

ボランティア活動について言及している情報の経時的変化〜新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響はある?

- 分析に用いたデータソース

Quidは多言語に対応しているシステムなので、英語だけでなく日本語で記載されたテキストも解析用のデータソースとして使用しました。

今回、日本語にこだわった理由とは、解析により、日本人独特の生活習慣や価値観に紐づくモチベーションが発見できるのではないかという期待を抱いたからです。

具体的には、国内で報道されたニュースや、日本語で記載されたソーシャルメディアの投稿情報を用いました。下図は「ボランティア」に関して何らかの言及をしているデータを検索した結果を示していますが、そのほとんどがTwitterによるデータでした。

情報源の種類のトレンド

- ボランティアについてツィートしていた年齢と職業の分布

次に、Twitterでツィートしていたユーザーの年齢層を見てみたところ、25-34歳が最も多く、次いで18-24歳という結果でした。このことから、学生から社会人のいわゆる若手・中堅層に多く分布していることが分かります。

ボランティアについてツィートしていた年齢と職業の分布

また下図は、ツィートした人々の職業分布を示していますが、「学生」が最も多く、年齢層からも学生がボランティア活動に大きな関心を寄せている裏付けが得られています。次に、「芸術・創作」「教育」「健康・医療」「個人および家事代行サービス」など、よりボランティアの内容に近い職業の分布が多く占めていることが分かります。

ボランティアについてツィートした人々の職業分布

ここまでのステップで、ボランティアに関連する情報の多かったメディアはTwitterであるということと、「学生」を中心とした若年層がボランティアに関心を寄せていることが分かりました。

- 感情分析

下図は、過去27か月間(2018年9月~2020年11月)のボランティア活動に関する記事やSNS投稿及びメンションの定量値の経時的変化を示しています。Quidは、テキストデータの読み込みと同時に、感情まで分析します。ポジティブ=肯定的(緑色)、あるいはネガティブ=否定的(赤色)な内容かを自動的に判断するのです。

図では、緑色のエリアが多いことから、大多数のテキスト情報では、ボランティアに対し、ポジティブな感情が働いていることが分かります。しかし、一部ではあるものの、ネガティブな感情も存在しています。

両方合わせた合計値は、青い線で示されますが、2018年9月や2019年10月に大きなピークが見られているものの、それ以外の時期で大きな変化はなく、推移しているようです。

2020年に着目すると、わずかな減少傾向が見られますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による大きな影響は受けていないようです。解析する前には、ボランティア活動そのものが制限されている結果を推測しましたが、一方で、何らかの需要が増している可能性も示唆されています。

過去27か月間(2018年9月~2020年11月)のボランティア活動に関する記事やSNS投稿及びメンションの定量値の経時的変化

ちなみに平成30年台風第21号が発生した2018年9月や、令和元年東日本台風が発生した2019年10月に見られるピークは、台風による水害など災害が発生した時期と一致していました。これに連動し、被災地支援によるツィートや、支援により注目された方を中心とした拡散が、情報量の多さに貢献していました。あらためて、SNSによる情報拡散の威力を裏付ける結果となっています。

次に、ボランティア活動に関する感情分析(センチメント分析やポジネガ分析ともいつ)の結果を詳しくみていきます。これらの情報に、ボランティア活動のモチベーションに関する輪郭が見えてくるかもしれません。

ボランティア活動に関する感情分析

先ず、「楽しい」「好き」「面白い」「興味がある」といった自然発生する感情を表す単語を含むテキスト情報が、肯定的(ポジティブ)な感情として分析されていました。特に「楽しい」に関連する投稿が多いことから、コロナ禍においてもボランティア活動そのものが楽しい時間と捉えている人々が一定数存在していると考えられます。

「何に対してポジティブな感情が沸き上がったのか」についての知見を得たく、個々のツィート内容を調べたところ、下記のようなツイートが見つかりました。「子供が好き」や「他者との交流が楽しい」といった純粋に楽しいと思える活動というのが理由だそうです。

「楽しい」のツィート例:

ボランティアで大好きな子供たちと関われるのが楽しいし、
子供たちに会いたくて行きたいと思える(^^♪

学校とバイトだけの毎日から、ボランティアで行く海外の文化が興味深い!
またプロボランティアとの交流も楽しい

そして「ありがたい」は、ボランティア活動によって救われた人々の率直な声が発信されていました。

「ありがたい」のツィート例:

たくさんの寄付をいただきありがたい

しかし驚くべきことに、ボランティアの活動している立場の方が、ありがたいとつぶやいている投稿もありました。ボランティアで支援を受ける側だけでなく、支援を与える側にとっても得られるものが大きい経験ということでしょう。

ボランティアに行くことで、色々勉強になってありがたい。

一方で、「怖い」や「拘束時間が長い」「しんどい」といった、否定的(ネガティブ)な感情に紐づく投稿も、少数ではあるものの存在していました。

「楽しい」のツィート例:

ボランティアで日本語を教えるのは結構ハード!だけど楽しい

しかし下記ツィート例のように、経験がないことに対する不安感を表現したものもあり、必ずしもボランティアに対して否定的な意見を持っているわけではないようです。

「怖い」のツィート例:

ボランティアに行ってみたいけど、経験がないから怖いなぁ。つとまるか心配。

まずは自然言語処理によりテキスト情報を分類し、2020年ボランティア活動のトレンドを把握してみる

「コロナ禍にあり、どのようなボランティア活動が注目されていたのだろう?
普段よりも自由に外出や移動ができないなか、行われる活動には、より高いモチベーションが働いているのではないか?」

この疑問を明らかにするため、自然言語処理により2020年のボランティア活動の全体像を把握するため、トレンドを解析してみました。

2020年ボランティア活動のトレンド

Quidが、ボランティアに関するニュースやSNS投稿記事など読み込んだテキスト情報を、類似した内容を一つのクラスターとしてグルーピングし、異なる色で表した上図のような、ネットワークマップで可視化します。

ネットワークマップの「災害、熊本、台風、コロナ」などクラスターの名称を見るだけで、どのようなボランティア活動が話題に上っていたかが分かります。さらに、クラスターの大きさ(ツィート数の多さ)から、どれがマジョリティで、どれがマイノリティ(ニッチ)なのか、視覚的にトレンドを把握することができます。

具体的に、「猫、動物、保護、里親」や「被災地支援」など、時期を問わず活動されている盛んに活動されているボランティアが大きなクラスターを形成していました。

そして「医療機関」におけるボランティアも、比較的大きいクラスターとなっていましたが、これはコロナ禍において需要が高まったからと考えられます。

また「東京オリンピック」クラスターは、「猫、動物、保護、里親」や「被災地支援」から離れた位置に存在していることもあり、ボランティア活動としては珍しい部類のため、目に留まりました。
(上図の赤枠)

いくつかトレンドと見られるクラスターから、「被災地支援」「動物愛護」「スポーツ」と志向の全く異なる3つのクラスター(下図の赤枠)の関連性に着目してみました。

2020年ボランティア活動のトレンド

これら3つのクラスターの関連性を分析するため、ハイライト表示させると、各クラスターの相関が非常に分かりやすくなります。Quidのネットワークマップで表示されるクラスターは、位置が近いほど内容が類似していることを示しています。

2020年ボランティア活動のトレンド

そのため上図では「災害、熊本、台風、コロナ」と「被災、大震災、人、災害、福島」はいずれも被災地に関する情報のため、近接したクラスターとして位置づけられています。

一方で「猫、動物、保護、里親」は、動物ボランティアについての内容であり、被災地ボランティアのクラスターより離れた場所に位置していました。

被災地の様子

そして「大会、東京、選手、参加、サッカー、開催」といったスポーツボランティアは、被災地と動物ボランティアから、さらに離れた場所にクラスターを形成していました。これは、被災地と動物の方がより内容が類似しており、これらとスポーツボランティアは内容の類似性が低いと、容易に想像がつきます。

サッカーの様子

今回の分析によると、2020年に大流行した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による、活動の低下はみられませんでした。むしろ代表的なボランティア活動である動物保護や被災地支援は常に一定の割合で話題に上り、オリンピック支援は注目され続け、医療機関におけるボランティアの需要が新たに発生するなど、コロナ禍で外出が困難な状況下にもかかわらず、ボランティア活動への意欲は高まっているように見受けられました。

そしてボランティア活動を行うモチベーションについて探るべく、解析を掘り下げて進めていくと、人の本質に触れるような心情により動かされていることが見えてきました。次回、その詳細を明らかにします。

<パート2>に続く

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