イベントレポート2019/6/7
CTCと英国IDBS社、日本ユーザー会「IJUM」を開催
2018年11月30日(金)、東京都港区のザ・ランドマークスクエアトーキョーで、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)と英国ID Business Solutions Ltd.(以下、IDBS社)は、IDBS Japan User Meeting 2018(以下、IJUM)を開催しました。IJUMは、2年に1回、IDBS社製品をご利用いただいているユーザー様向けに開催している、製品の利用度向上や機能改良を目的とした情報交換の場です。今回は、近年日本で著しく普及してきた電子実験ノートシステム「E-WorkBook」について、最新バージョンのアップデートだけでなく、ユーザー様によるディスカッションを行いました。ご参加者からは「ユーザーディスカッションが大変有意義で、もっと長く議論を続けたかった。」とご感想をいただけたほど、ディスカッションが盛り上がりました。
- アジェンダ(タイトルをクリックすると、各発表のサマリーへジャンプします。)
- オープニングセッション
- IDBSセッション
- ランチセッション
- セミナーセッション
- コーヒーブレイク ~新規取扱いソリューション「Sinequa ES」のご紹介~
- ユーザー様によるコミュニケーション&ディスカッションセッション
オープニングセッション
当セッションでは、参加者による自己紹介を行いました。
CTCに続き、IDBS社スタッフの自己紹介を行いました。各メンバーのIDBS社における役割を説明した後、CTCから投げかけられた「What is your dream job?(あなたにとって、夢の仕事とは何ですか?)」の問いには、「スキーのインストラクター」「パイロット」など、幼い頃に夢見ていた職業が次々に飛び出し、聴衆から笑いが起こる場面もありました。
そして当セッションの目玉は、ユーザー様による自己紹介でした。各社様ごとに、現在E-WorkBookをお使いの業務、今後適用拡大を検討していきたい業務や領域について、語っていただきました。また、「こどもの頃に描いていた大人になった時の夢はなんですか?」や「今一番夢中になっていることはなんですか?」といった、プライベートなご質問にも皆様快くお答えいただきました。ユーモア溢れるご回答を通じて、ユーザー様の新たな一面がうかがえ、場が和み、会場が和気あいあいとした雰囲気に包まれました。
IDBSセッション
IDBS Update & Strategy
2017年10月、IDBS社は米国の科学技術関連企業Danaherの傘下に入りました。これにより、同社はますます、創薬研究開発の加速化を支援する、ITソリューションを提供するビジネスを展開していくこととなりました。具体的には、バイオ医薬品市場の成長に伴う、R&Dプロセスを支援するソリューションに注力が挙げられます。またワールドワイドのライフサイエンス業界において、クラウドシステム利用が認知拡大されてきているため、近年IDBS社製品のSaaS化を精力的に進めています。
また同業界では、外部コラボレーションの活発化や社内外ステークホルダーの多様化、業務部門とIT部門が共同でシステム導入に携わる場面の増加など、あらゆる変化が見られます。このように複雑化してきた業務を、よりいっそう支援できるシステム開発や体制構築にも取り組んでいます。
続いてIDBS社Scott氏が登壇し、E-WorkBookの製品戦略についてアップデートしました。
E-WorkBookは電子実験ノートシステムです。同システムを用いることで、電子媒体で試験結果の記録や管理が行えるようになります。しかしIDBS社が目指すのは、試験結果の電子化に留まりません。実験開始前の準備段階から試薬など実験資材の管理、報告用のレポート作成、承認ワークフローなど、実験を取り巻くワークフロー全体のサポートをゴールとしています。
そこでE-WorkBookを中心とした、さまざまなモジュールのラインナップを拡充してきています。試験依頼やサンプル管理、企業間コラボレーションにおける情報共有プラットフォームなど、オンプレミスだけでなくクラウドでも利用可能なモジュールを徐々に増やしています。
特にキーとなるのが、薬効薬理や薬物動態など生物評価系試験で用いられてきたSpreadsheet(旧名称BioBook)機能です。これは現在E-WorkBook Advanceモジュールとして、non-GxPだけでなく、GLPやGMPなど規制対応試験の記録管理にも広く活用されてきています。
またE-WorkBookにInventoryモジュールを組み合わせることで、試験に用いた試薬や実験機器が、追跡可能な形で記録されていきます。
最新のE-WorkBookは、Webブラウザーへの対応を契機に、ビジュアルがかなり洗練されてきました。聴講していたユーザーの皆様は、今どきのデザインになったE-WorkBookと各モジュールの画面に、大変興味を持ってご覧になっていました。
ランチセッション
ランチタイムには、併設のデモブースセッションでIDBS社Will Gray氏より、バイオプロセスとバイオアナリシス業務向けのE-WorkBook Advance(Spreadsheet機能)ソリューションのデモを披露しました。お客様は、ランチや食後のコーヒーを楽しみながら、複雑な業務をワークフロー化し、コンプライアンスも向上させるソリューションに注目されていました。
ご参考:
IDBS社Bioanalysisソリューション:https://www.idbs.com/solutions/bioanalysis/
IDBS社Bioprocessソリューション:https://www.idbs.com/solutions/bioprocess-research-development/
またCTCからは、ICTテクノロジーを駆使して、ユーザー様同士をつないでオンラインディスカッションするという新企画「CTC Live!」をご紹介しました。隔年で開催されますが、その間はCTC Live!に自社からご参加いただくことで、ユーザー様同士が自らの体験談をシェアしながら、課題解決のヒントを得ていただくことができます。
セミナーセッション
E-WorkBookを利用したデータインテグリティ対応
当セッションは、CTCから発表しました。近年PIC/Sは、GDocPs(Good Documentation Practics)で言及されている追加事項(ALCOA+)まで対応を求めています。したがって、操作ステップごとにデータが保存される仕組みや監査証跡など、一連の業務でデータの整合性が保たれていることが、より重要になってきています。しかし、FDA Warning Letterによる指摘事項から、「試験結果の日記録や廃棄」「オーディットトレイルの不備」などデータ生成前後における不整合の事例が後を絶ちません。このように、データの整合性を保つ仕組みの欠如が課題となっています。
こうした課題に対し、電子実験ノートシステムE-WorkBookに実験データを取り込むと、実験データに対して行った動作が、監査証跡として記録されるため、データインテグリティの重要な部分を担保することができます。しかし、システム化するだけで、データインテグリティの要件を全てカバーするのは困難であり、業務全体に対するSOPの確立も同時に必要となります。
E-WorkBookの機器連携ストラテジー
機器から出力される生データを電子実験ノートに取り込む手段は、多くのユーザーにとって関心があります。特にデータインテグリティ対応において、生データを取り込みに人の手を介在するか否かは、策定するSOPの内容に大きな影響を与えます。
当セッションでは、E-WorkBookが対応可能な機器連携のストラテジーについて、IDBS社のWill氏が発表しました。ライフサイエンス分野の研究では、実験や業務の種類に応じて、用いられる機器や出力されるデータ形式が多岐に渡ります。そのためE-WorkBookでは、あらゆる機器に対し、一様に直接繋ぐことは目指していません。USBシリアル接続などで、機器から生データを直接取り込める機器もありますが、ほかプラグインによる機器接続や、手動によるファイルのインポートやLIMSなどサードパーティシステムのデータベースへの検索によるデータ抽出など、様々な選択肢を提供するというのがIDBS社の機器接続の戦略です。
CTCからは、E-WorBookの機器接続のデモを行いました。機器との繋ぎ方とデータ取り込み方には、いくつかのパターンがあります。また、これにはSpreadsheet機能が必要です。電子天秤やpHメーターとUSBやRS-232接続により、測定データをSpreadsheetに直接取り込みできます。またLC/MSなどから出力されるテキストデータの一括インポートも行えます。取り込んだデータのグラフ化が容易に行えるところもデモでご覧いただきました。また、化合物別のプロットを重ね合わせたチャートを表示させるなど、レポート作成に便利なグラフを描画しました。
今後もIDBS社とCTCは、より利便性の高い電子実験ノートシステムの提供を目指し、製品開発や周辺を取り巻く運用のご提案に注力していきます。
コーヒーブレイク
~新規取扱いソリューション「Sinequa ES」のご紹介~
当セッションでは、2018年10月にCTCが取扱い開始した、コグニティブ検索・エンタープライズサーチシステムSinequa ESについて紹介しました。エンタープライズサーチとは、社内外のファイルシステムやWebサイト、メール、データベースなどをさまざまなシステムを繋いで一括検索するものを指します。そしてSinequa ESは、エンタープライズサーチの発展形として、自然言語処理や文書の類似性計算などを駆使した「コグニティブ検索」を可能とし、欲しい情報に辿りつくまでの時間を圧倒的に短縮させます。
Sinequa ESは、様々なシステムと接続・検索するスマートコネクターを標準で180種類以上提供しております。その一つとして、E-WorkBookと接続することができます。これにより、Sinequaの検索画面から、E-WorkBookに格納される実験ノートに記載された様々な情報と他システム(SharePointやBoxなど)に対して同時に一括検索することが可能になります。
ユーザー様によるコミュニケーション&ディスカッションセッション
当セッションでは、IJUMで毎回好評を博している、ユーザー様同士によるディスカッションを行いました。ユーザー様には、事前にアンケートへ回答いただき、議論したいテーマを提案いただいていました。今回はその中から、要望が大きかったテーマをピックアップし、約1時間半にわたり活発なディスカッションが繰り広げられました。
ディスカッションテーマ
- E-WorkBook導入後のメリットは?
- 情報共有(検索性、記述のしやすさ、コミュニケーション等)
- 手間の削減(切り貼りの手間、不要な資料作成等)
- 再実験の防止等により、他業務に時間を割くことができる
- トレーサビリティ等、コンプライアンス対応の強化
- 定型化しにくい試験系におけるテンプレート活用
- 定型化できる共通の操作、業務は?(試薬調製など?)
- 運用上、工夫できることは?
- QA実施時の対応、承認ワークフローの運用について
- どのようにQA、QCを実施し、どこまで記載に残しているか?
- 実験室内での電子ノートの記入とリスク対策について
- 理想のラボとは?
- 実際の記入は現状どのように行っているか(タブレット検討など)
サマリー
E-WorkBook導入後のメリットは?に対し、以下のような声が寄せられました。
「ペーパーレス化が進んだのが最大のメリット。分析機器の測定データもPDF化すれば、ノート画面に取り込める。」
「タブレット端末やPCを実験室に持ち込んで、プロトコルをチェックしながら、結果を記入できるのが良い。実験プロトコルの間違いに気づいたその場で、E-WorkBook上で修正してから、実験をすぐにスタートできている。」
「実験データがE-WorkBookに溜まっていくほど、検索で情報が得られるようになり、部門を跨いだ情報共有ができているという実感がある。」
「全社でどの研究テーマに、誰がどのくらいリソースを割いて実験しているのか、俯瞰できる。これは幹部層にとって有益だ。」
「手書きの文字は後で読み返しても、分からないことがあったが、今は電子データ化されて見やすくなったので、解消された。」
「実験に用いた動物種などを選択式にすることで、スペルミスや表記の揺らぎがなくなり、すぐに使えるデータになったのは有難い。」
また「紙で行っていたQCチェックはE-WorkBookではどうしている?」や「現場にどこまでテンプレート変更の権限を持たせる?」など、最近導入したユーザー様による運用の悩みについて、経験豊富なユーザー様がアドバイスされる場面など、お互いに助け合われている場面も見られました。
このようにユーザー様間で、E-WorkBookを使い始めた時期は異なるものの、共通していたのは「システム化により、信頼性もしっかりと担保しながら研究開発をスピードアップさせ、患者様により早く薬を届けたい。」という情熱でした。絶え間ない議論は、2年後のIJUMでは、更なる発展を遂げた使用体験談を互いに持ち寄り、創薬研究開発を加速化につなげたいという思いに終結し、セッションが締めくくられました。
今後もIDBS社とCTCは、電子実験ノートシステムE-WorkBookの提供を通じて、製薬業界の発展に貢献していきます。
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