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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、2019年7月18日(木)、東京都品川区のInnovation Space DEJIMAにて、AIによるテキスト解析エンジン「Quid」のイベントを開催しました。同イベントは、6月に開催した「事例から学ぶ、AIによる戦略的課題の解決」の第2弾です。今回は、Quidの代表的なトレンド分析の事例をご紹介しました。
またゲストスピーカーに、株式会社博報堂 統合プランニング局 中川チーム チームリーダーの中川 悠様をお招きし、Quidで「Z世代」を分析した事例をご講演いただきました。Quidの解析により、世代による価値観の違いに注目が集まり、会場は盛り上がりを見せました。
この記事は同イベントのレポート第2回です。(→第1回へのリンクはコチラ)
様々な要因が絡み合って形成される「トレンド」の全体像を掴む
「今年はどんなファッションが流行っている?」と聞かれたら、TVや雑誌、街の人々の服装から、なんとなくイメージできます。しかし流行は一過性のもので、来年には全く違ったファッションがもてはやされるといったことが起きます。
これに対しトレンドは、消費者ニーズに加え、社会的背景や技術の進歩など、様々な要因の相関により、中長期的に形成される動向を指します。このようなトレンドの全体像を掴むことは、実は簡単ではありません。専門雑誌やニュースに一通り目を通しただけでは、たまたまその媒体が特定のトピックに注目していただけで、業界全体では何に注目が集まっており、また消費者がいる場合はどのように期待をしているかなど多面的な考察を得ることは難しいでしょう。
AIによるテキスト情報解析エンジンのQuidは、トレンド把握に威力を発揮します。
事例をみていただいた方がわかりやすいので、「自動運転」のトレンドをQuidで分析した結果をご覧いただきましょう。
世界中で実用化にむけて日進月歩で技術改良が重ねられている自動運転。果たして、どのような技術分野の開発が盛んに取り組まれているのでしょうか?
この謎を解くために、過去5年間の自動車に関する新聞記事をQuidに読み込ませました。自動運転に関する記事にも様々な内容がありますが、特に自動運転の技術に関する記事を読み解き、トレンドを分析してみました。中長期的な動向を反映するトレンドを抽出するには、定点観測ではなく、一定期間の情報を把握する必要があります。そのため5年間の新聞記事を対象にしましたが、そもそもこれは人海戦術では困難な情報量になります。それがQuidは、5年分の自動運転で注目を浴びているテクノロジーを一画面に可視化しました。
運転を制御する「AI・ディープラーニング」の技術開発が要になっていることは想像に難くないですが、実はそれに伴い必要になる大容量メモリの開発もまた自動運転の実用化において重要であり、開発に注力されていることが分かりました。
次に到来するトレンドを予測する
企業の商品開発や事業戦略を立案する方にとって、現在のトレンドだけでなく、将来トレンドとなるもの(こと)を予測するのは非常に重要です。これを見誤ってしまうと、多大な投資をして商品化したのはいいが、全く商品が売れなく採算が取れないという事態に陥ってしまいます。
しかし、次に到来するトレンドの予測に、確立された方法はありません。各業界の市場動向に精通した、経験豊富ないわゆる「目利き」の担当者が、情報検索に加え独自の知見や解釈により予測まで導くことが多いのではないでしょうか。当然ながら人海戦術によるトレンドの予測では、分析者の経験などでバイアスが掛かります。
ここでQuidは、客観的な視点によりトレンドの予測にも役立てることができます。
ここでは次にトレンドになりそうなワインが何か?をQuidで予測してみました。食品のトレンドは、消費者の口コミに大きくされます。そこで消費者の声が反映されたニュースやブログを分析してみました。
ワインに関する消費者の会話の中心は、香りと仕上がりが殆どしめていました。しかし、会話の中心からは外れているトピックこそ、新たなトレンドが潜んでいる可能性があります。その結果、興味深いトピックが見つかりました。なんと青い色をしたワイン(下図のBLUE WINE)が、消費者の間で認知度が少しずつ上がってきているようです。このように、話題の中心になっているのは現在のトレンドですが、話題の中心ではない少数派のトピックスこそが、将来のトレンドに変貌する可能性を大きく秘めています。
このように、Quidは読み込んだ膨大なテキストデータの全体像を定量的に把握したうえでトレンドを可視化しますが、正解を出すツールではありません。
例えば、ワインの商品開発でいうと、短期的にすぐに売れる商品を開発したいのか、数年後を見据えて流行の先端をいく商品を狙っているのか - 答えは分析の目的によっても異なりますので、分析する方が適切な質問を問いかけ、答えまで導いていく必要があるのでしょう。
しかし、全体像を把握して思考を整理し、思いもよらなかった知見を発見する過程において、QuidのようなAIの効果的な活用はこれまでのトレンド分析を劇的に改革させることでしょう。
さて次回は、招待講演者によるQuidを用いたトレンド分析の事例をご紹介します。ぜひご期待ください!
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