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in silico毒性予測システム Derek Nexus 農薬開発向けアプリケーション

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Derek Nexusは、知識ベースのin silico毒性予測システムです。化学物質の構造式から毒性に関与する部分構造を洗い出し、潜在的な変異原性や発がん性、皮膚感作性などの毒性エンドポイントを予測します。これは医薬品候補化合物に限らず、農薬化学物質物質にも適用が可能です。

殺虫剤などの農薬は、農作物に用いられますが、いずれ人体にも取り込まれる可能性があるため、発がん性や変異原性のリスクが低く安全性の高い農薬が求められています。

農薬の安全性評価でDerek Nexusが活用できるポイントはいくつかありますが、ここでは主にEFSA(European Food Safety Authority:欧州食品安全機関)ガイドライン対応に向けたDerek Nexus活用例についてご紹介いたします。

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EFSAガイドライン

EFSAガイドライン

EFSA(European Food Safety Authority:欧州食品安全機関)は“Guidance on the establishment of the residue definition for dietary risk assessment(食品リスク評価のための残留物の定義設定に関するガイダンス)”を策定しました。これは農薬に関するガイドラインで、まだドラフト段階であり、2016年6月から議論されています。

このガイダンス文書では、リスク評価で考慮すべき残留農薬(特に化学活性物質の代謝物)の同定に関する工程を説明し、その選択基準も示しています。また3つの実践的ケーススタディ(Isoproturon、Spiroxamine、Epoxiconazole)もAppendixとして収載されています。

ガイダンスの目的

新しい概念/開発に対応した植物保護製品(農薬)残留物の安全性評価に関するガイダンスを更新すること
  • Safety of mixtures:混合物の安全性
  • TTC (Threshold of Toxicological Concern):毒性学的閾値 
  • QSAR (Quantitative Structure-Activity Relationship):QSAR(定量的構造活性相関)
  • Read across :未試験物質の有害性は試験データのある類似物質と同程度と推定される
  • Better analytical tools:より適切な解析ツール
  • Avoid unnecessary testing → make this a last resort:不要な試験を回避する → これを最終手段とする
残留物=代謝産物+分解物(代謝産物とも呼ばれる)
  • ヒト/動物に暴露される可能性がある最終残留物質

Section 2.3, step 5 of module 1

対訳

2.3 遺伝毒性予測のための、(Q)SARやリードアクロスのアプリケーション(steps 5 and 6)

Step 5には、科学的に有効な(Q)SARモデルの使用が含まれる (Section 2.3.1参照)。遺伝毒性予測の計算モデルは、単一モデルの単独使用を避けるべきである。予測の感度および特異性を最大限にするために、可能な場合は、少なくとも2つの独立した(Q)SARモデル(異なるトレーニングセットおよび/または、知識ベースモデルと統計ベースモデルなど異なるアルゴリズムに基づく)を各々の遺伝毒性エンドポイント(Worth et al., 2010, 2011a)に適用する必要がある。モデルによって提供される利用可能な全情報を使用して「証拠を重み付けする」アプローチを実行する必要がある。(例. 適用可能なドメイン、提案されたメカニズム情報、類似物質の予測)

Lhasaシステムの適用

ディシジョンスキームにおいて、
Lhasaのシステムはどのように支援できるでしょうか?

下図はガイダンス中に示されるスキーム上で、Lhasa社が提供するDerekとSarahほか関連システムは各ステップで意思決定を 支援するツールとして利用可能です。

Step1 and Step2MeteorZeneth
残留代謝研究の任意のレベルで同定された代謝産物
リスクの懸念が少ない代謝産物の排除
Step3Vitic
代謝産物は遺伝毒性に分類される?
Step4
代謝産物の遺伝毒性が特徴づけられているか?
Step5 and Step6DerekSarah
(Q)SAR予測・リードアクロス:代謝産物の遺伝毒性プロファイリングとグルーピング
Step7 (optional)
複合暴露(グルーピングの後)→ TTC遺伝毒性もしくはinconclusive?
Step8
グループ代表のバッテリー試験→遺伝毒性のリスクの懸念があるかどうか?
Step9
ケースbyケースでリスク評価者/マネージャによって更なる対応を要する
Step10
代謝産物の一般毒性が特徴づけられているか?
Step11 (optional)
累積暴露→ TTCもしくはinconclusive?

Lhasaシステムはガイドライン対応にどのように活用できるでしょうか?

対訳

2.3.1.1 モデルの科学的妥当性

規制対応の目的で(Q)SARを使用する第一条件は、モデルの妥当性を実証することである。OECD(OECD、2007a)は、規制機関が(Q)SARの実績を評価するための5つのバリデーション原則を策定した。 これによると、モデルは以下の項目と関連している必要がある。

  1. 定義されたエンドポイント
  2. 明確なアルゴリズム
  3. 適用可能なドメインの定義
  4. 適切な適合度、頑健性、予測精度の測定
  5. 可能であれば、メカニズム解釈

上に挙げた5つの原則に該当する情報は、予測の関連文書の一部として評価者が利用できるようにすべきです。これらはREACHに関するOECDの原則と同じ条件です。 Lhasa社はJRCの承認を受けたQMRFを所持しており、Derekの関連するエンドポイントについて証明できる情報が網羅されています。Derekほかいくつかのモデルに関する情報は、JRC QSARモデルデータベースから入手できます。

OECD の基準
  • DerekはQMRFに収載(JRC承認済み)Derek
  • SarahはQMRFに収載(JRC未承認)Sarah
※用語説明
JRC – Joint Research Centre = regulatory body involved in REACh
QMRF = QSAR model reporting format (a report proving that the model fits all of the OECD principles).

Applicability domain

対訳(赤枠)

2.3.1.2 適用可能領域

トレーニングセットが利用可能でない知識ベースモデル(例えば、DEREK)については、適用可能領域を上述のように定義することはできない。 しかしながら、知識ベースのモデルは、通常は複数のサポート情報の提供が可能である。 予測の信頼性と妥当性を評価するために使用できる作用機序、例証化合物、参考文献を提案する。

これは、Derekは適用可能なドメインが定義されていませんが、その代りとして、受け入れられる関連データを提供していることを説明しています。

Relevant Endpoints – Genotoxicity Assessment

対訳(赤枠)

2.3.1.3 遺伝毒性に関連するエンドポイント

モデルによって提供される追加情報(例: 反応の示唆されたメカニズム、不確かさ)は、裏付け文書に含めるべきである。探索されるべき関連する遺伝毒性エンドポイントは、遺伝子変異や構造的および数的染色体異常である。

Endpoint Gene mutations Structural CA Numerical CA
Related assay Ames test, HPRT Micronucleus, Chrom Abs Micronucleus
Derek Alerts 117 Alerts 1. 98 Alerts 2.
-Derek validation Yes Yes (in vitro and in vivo)
-Derek QMRF Yes Yes
Sarah model Yes No
  1. Derek Nexus5.0でbacterial mutagenicityの117アラート検出
  2. Derek Nexus5.0でchromosome damageの98アラート検出

上記の結果から、Derek NexusとSarah Nexusでは、ガイダンスの関連するエンドポイントをカバーしていることを示しています。

結論とドキュメンテーション

結論に導く際は、(Q)SAR予測結果を評価の一部として用いエキスパートレビューで結論づけることが必要となります。

ドキュメントは上記の10項目を提供する必要がありますが、Derekが出力するレポートにはこれら10項目全てを含みます。
1)-8) はQMRFに置き換え可能、9) はDerek内の例証化合物や類似化合物情報、10) は各Alertのコメント欄の情報でカバーできます。

構造およびMIEのリードアクロスに基づくグループ化

Derek Nexus
  • 同様の構造的特徴、MIEおよびエンドポイントに基づくアラート
  • 同じDerek Nexusアラートが検出される=同じSARグループ
  • MIEはアラートのコメントに記載される

DerekとSarah Nexusは、リードアクロスのソースとなる化学物質を、例証化合物として提供可能です。

Vitic Nexusはソースとなる化学物質の遺伝毒性データを特定するために使用できます。

※MIE:molecular initiating event
分子レベルの初期事象。例えば皮膚感作においてのMIEは、皮膚内に存在する蛋白質の求核中心と求電子物質との共有結合のことである。

ケーススタディ

Lhasaケーススタディ

これはLhasa社が小規模のデータセットを用いて行った調査です。

  • 農薬のデータセットを生成
  • JMPRから257化合物を取得、そのうち
    • Vitic Nexusで216化合物(85%)が、遺伝毒性データあり
    • Vitic Nexusで22化合物(8%)が、遺伝毒性データなし
    • 19化合物(7%)が Vitic Nexusにデータが存在しない

Vitic Nexusは農薬の遺伝毒性データを高くカバーしている結果が示されました。

  • Derek Nexusアラート開発者は、これら植物保護製品(農薬)のかなりの割合を網羅しています。
  • Vitic Nexusには、多くの重要且つ役立つデータがあることを示しています。
※用語説明
JMPR:FAO/WHO合同残留農薬専門家会議
FAO:Food and Agriculture Organization :国際連合食糧農業機関
DerekとSarahによる予測

257化合物のうち、Nexusで予測可能な251化合物について評価しました。

DerekとSarah Nexusで251化合物を予測DerekSarah
DerekとSarah Nexusで251化合物を予測
  • 優れた予測範囲– 94% (251-14/251)
  • 優れた一致率– 69% ((127+45+1)/251)) の化合物は、両方のシステムによる予測結果が一致しています。
  • 25% (64/251) が更なるエキスパートレビューを必要とする結果でした。
  • Sarah NexusでExact matchする化合物の数 (168/251 = 67%) は、Sarah Nexusのトレーニングセットが農薬をかなり広く網羅していることを示しています。

EFSAケーススタディ

EFSA残留物定義に関するファイナルガイダンスでは、例として3つのケーススタディ(Isoproturon,とEpoxiconazole, Spiroxamine)を収載しています。

Appendix B - Isoproturon:
概要:
Isoproturonで同定された代謝産物のリスク評価にQ(SAR)を用いたというケーススタディ。
結論:
毒性学的性質を有するすべての代謝産物について遺伝毒性評価(ステップ5-9)が行われた。

Isoproturonの代謝産物一覧

Q(SAR)モデルの適用

つまり、潜在的な遺伝毒性(遺伝子変異と染色体異常)を予測するために、Isopuroturonの同定された代謝産物に対し、Q(SAR)予測が用いられた。

このQ(SAR)モデルとしてDerek Nexusが用いられた。

代謝産物に対するQ(SAR)モデルの予測結果

Derek含む全てのQ(SAR)モデルでNegativeと予測された代謝産物は、次のステップ(リードアクロス)へと進めることができた。

今後の取り組み

Lhasa社は、農薬分野におけるQSAR予測の科学的発展をさらに促進させるためにEFSAと議論を続けています。

  • ICH M7(DNA反応性(変異原性)不純物のハザード評価)領域におけるLhasa社の経験活用
  • 残留農薬評価におけるEFSAのガイドライン策定
  • EFSAへのソフトウェアアクセス提供-トレーニングと共に長期間にわたる評価
  • LhasaによるQSARモデル評価のためのリソース提供
  • Derek NexusやSarah Nexusの開発?
  • Sarah Nexusで可能性がある小核モデル(染色体異常エンドポイント)

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