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エーザイ株式会社:携帯型ラマン分光器TruScan RMで、原料受入確認試験時の煩雑なサンプリングを不要にし、PIC/S  GMP対応だけでなく業務効率化もアップ!

エーザイ株式会社
  • エーザイ株式会社
    グローバルクオリティ本部
    クオリティCFU
    日本リージョナルクオリティ統括部
    川島品質保証部
    シニアマネージャー
    古崎 輝也 様

エーザイ株式会社(以下、エーザイ)は、国内製薬業界においてグローバル展開におけるパイオニア的存在です。今では日本を代表するグロ―バル製薬企業として知られるエーザイで、医療用医薬品の安定供給を支えるのが、岐阜県各務原市にある生産拠点の川島工園です。

川島工園では、日本がPIC/Sに加盟する前より、医薬品を海外に輸出することがありました。PIC/S加盟国への輸出の際には、PIC/S GMPガイドラインに則り、原料受入時の全梱確認試験を行う必要があったため、日本薬局方に収載される確認試験(以下、局方の確認試験)を実施していました。

しかし、2014年7月1日の日本のPIC/S正式加盟後は、国内向け医薬品製造も全て全梱検査が必要となるため、もはや従来の局方の確認試験では追い付かなくなると予想されました。

そこでエーザイは、日本のPIC/S加盟と同時に、原料受入時の全梱確認試験対応でデファクトスタンダートとなっていた携帯型ラマン分光器Thermo Fisher Scientific社TruScan RMを導入しました。

導入してからは、原料受け入れ検査に関するノウハウを集約して確立された運用法により、川島工園における原料受入時の全梱確認試験にTruScan RMが活用される場面が徐々に増えてきました。

TruScan RMの利用により、局方の確認試験で労力が掛かっていたサンプリングを省略でき、規制対応だけでなく業務効率化にも繋がりました。

精力的に新規医薬品開発を進めるエーザイでは、今後も新しい種類の原料が川島工園に入荷されていきます。信頼性の高い医薬品を製造する第一歩は、医薬品原料の品質を保証することです。ここで重要な役割を果たしているTruScan RMは、これからもエーザイの優れた医薬品生産を支えていきます。

課題と効果

  • Before
    • 課題
      従来の日本薬局方試験に収載された確認試験では、原料の一部を採取して行われるサンプリングがとにかく手間が掛かる。包材の場合、袋の開封時の手間や人為的エラー発生時の逸脱など、労力とリスクが大きな懸念点だった。
  • After
    • 効果
      TruScan RMを導入することで、煩雑なサンプリングの作業をスキップでき、業務の省力化だけでなく品質管理が更に万全となった。梱数の多い入荷原料を受入れする際に、全梱確認試験が現実的に可能となった。

導入の背景・経緯

規制の強化「2014年7月1日、日本のPIC/S正式加盟」を受けて、対策を検討開始

  • 日本のPIC/S加盟以前より、早い時期からグローバル進出を果たし、既に海外に医薬品を輸出していた。
  • PIC/S加盟国への輸出の際には、PIC/S GMPガイドラインに則り、原料受入時の全梱確認試験を行う必要があった。しかし頻度や梱数が少なかったため、従来の局方の確認試験で対応できていた。
  • 2014年7月1日、日本のPIC/S加盟が正式に決定し、それ以降はPIC/S GMP(Annex8)の要件により、原料受入時の確認試験で全梱検査、すなわち全ての容器・包材に含まれる原料の同一性評価が求められるようになった。
  • 国内向けの医薬品製造は規模が大きく、測定対象の原料が大幅に広がるため、従来の局方の確認試験では手作業が多く、追いついていけないことが懸念された。
  • そこで品質管理担当部署を中心に、原料受入時の確認試験の全梱検査に向けた対策を検討開始した。
  • 外部展示会への参加やインターネット検索で、対応策について情報収集した。

とにかく負担の大きい、確認試験時のサンプリングを省力化したかった

古崎 輝也 様
  • 従来の局方の確認試験で必要となる、原料のサンプリング作業にかなりの労力が掛かっている。
  • サンプリングする際には包材の場合は、袋を開封し、原料を採取してから、袋を閉じるという三段階の作業となる。とりわけ袋の開閉は手間取るだけでなく万が一、原料品質を損ねると、逸脱のリスクとなる。また、サンプリングには、質量測定や手書き記載、ラベル貼付など、多くの付随する手作業が発生する。このため、とにかくサンプリングを省略したかった。

厳正なる検討により、辿りついた「携帯型ラマン分光器」

  • 情報収集していくなかで、国内外を問わず、原料受入時の確認試験にThermo Fisher Scientific社携帯型ラマン分光器TruScan RMが広く利用されていることが分かった。
  • 非破壊・非接触による包装材越しの測定で確認試験が行えるという点から、また、化学構造の本質に基づく情報により同定がなされるという点から、全梱確認試験の対策としてラマン分光器を利用する方針に固まった。そのため、既に他の用途で導入済みだった近赤外(以下、NIR)分光装置は全梱確認試験の選択肢から外れた。
  • 可搬型のラマン分光装置導入も候補に挙がったが、多くの測定上の自由度を持つラボ機に近く、ルーチン分析には適さないと判断した。

導入製品を選択した理由

PIC/S GMP対応原料受入時の全梱確認試験に向けて、世界中で多数の導入実績を持つ携帯型ラマン分光器TruScan RMを導入

  • 国内外で多くの導入実績があるという安心感から、TruScan RMの導入を決定した。
  • 導入前に、入荷原料から採取したサンプル化合物で評価したところ、想定通りの結果が得られ、実用に申し分ない性能と判断した。
  • 携帯型ラマンでは、サンプルの容器・包装越しに測定でき、原料のサンプリングが不要なので、従来の確認試験業務のボトルネックを解消できると大いに期待できた。
  • 原料確認試験に特化して開発されているため、余分な機能を持たず、バリデーションをより簡素化できると考えた。
測定の様子

この画像はイメージです。当事例で実在する人物や製品の使用風景を撮影したものではありません。

導入のポイント

最初から全ての入荷原料をTruScan RMの測定対象とせず、
リーズナブルに優先順位付け

  • TruScan RMは導入後すぐにGMP対応の原料確認試験に使えるものではなく、バリデーションが必須である。
  • 他の業務の合間を縫ってバリデーション対応していた。そのため、最初から全ての入荷原料をTruScan RMの測定対象とせず、高い効果が期待される原料を優先順位づけてバリデーション実施。局方の確認試験と並行して、徐々にTruScan RMによる確認試験に置き換えていった。
  • TruScan RMで測定対象とする原料は、入荷頻度に加え、容器・包材などサンプル個数の多さを考慮して優先順位付けした。結果的に、主薬よりも入荷量の多い賦形剤の受入れ時に、TruScan RMを用いた全梱確認試験が行われるようになった。

785nm励起波長のラマンは魔法のレーザーではない!測定対象の見極めが重要

  • 原料物質の化学的特性により、ラマン活性が低いものを除き、測定対象物質を選択している。
  • 天然物や精製度が低い化学物質は最初から対象外とした。

目的に適った合理的なバリデーション実施

この画像はイメージです。当事例で実在する人物や製品の使用風景を撮影したものではありません。

  • HPLCを用いた測定法で評価するような定量性に関するバリデーションは、同一性を評価する原料確認試験では不要と判断した。
  • 対照物質と同一の原料で「PASS」、異なる原料では「FAIL」と判定されるかに的を絞り、同一性評価にフォーカスしたバリデーションを実施した。
  • 包装越しに測れるかという実運用を想定したバリデーションも実施した。包装が二重、三重でも問題なく測定できることを確認した。(焦点距離が少々ずれていても、TruScan RMから十分な強度のスペクトルが得られていることが分かった)

導入の効果

古崎 輝也 様
  • 測定時には、自分のパスワード以外は何も入力しません。メソッドを選択してから原料を測定するだけで、いたってシンプルです。
    大変なサンプリング作業から解放されるので、とても助かっています。いざ測定が始まると、パラメーター一つ変更できないという「いい感じで融通の利かないところ」が気に入っています。

多くの手作業を経るサンプリングから解放されたのが最大のメリット

  • TruScan RMは容器や瓶、包装越しに原料を直接測定できるため、手間が掛かり品質管理上リスクを伴うサンプリングを省力化でき、業務効率化した。
  • 入荷頻度が多く、しかも梱包数が多い原料の入荷時に、TruScan RMの威力を発揮している。

TruScan RMは原料確認試験に不要な機能はなし!管理者として担当者への教育がしやすい

  • 現場でTruScan RMを用いる担当者には、包装上からのTruScan RMの当てる角度や袋の押さえ方など、正確に測定できるためのノウハウを実地訓練した。
  • 原料確認試験に特化して開発されたTruScan RMには、不要な機能が一切ついていないため、操作を覚えやすい。実地訓練を重ねることで、自然と機能が身についていった。
  • GMP対応原料受入時の確認試験では、研究用途のレーザー波長を変えられるような多機能なものは向かなく、寧ろバリデーションの負荷が増えるだけ。TruScan RMは、必要な機能に限定されており、測定時にパラメーターが変更される余地がないのが、非常に良い。
  • 原料受入時の確認試験は、倉庫の一角のサンプリング室で行われるため、複雑な操作が敬遠される。TruScan RMの操作性はいたってシンプルなので、使用される環境にも適した設計である。
測定の様子

この画像はイメージです。当事例で実在する人物や製品の使用風景を撮影したものではありません。

今後の展望とベンダーに期待すること

  • 今後も、ラマンの適性とコスト効率の両面を意識し、TruScan RMで測定対象とする原料を見極めながら、徐々に測定対象の原料の種類を増やしていきたい。
  • NMRやIRなどと比較すると、実用されてから歴史の浅い、ラマンスペクトルに関する論文などの既知情報が少ない。Thermo Fisher Scientific社が製品開発する上で蓄積してきたラマンスペクトルに関する知見を図鑑やデータベースなど辞書化してほしい。これが実現すると、ラマンスペクトルに含まれるピークが、包装材か主薬・賦形剤由来なのかどうか判別できて有用なものとなるにちがいない。
ラマンスペクトル包装材違い

この画像はイメージです。当事例で実在する人物や製品の使用風景を撮影したものではありません。

導入企業様の情報

エーザイ株式会社

本社住所
エーザイ株式会社
〒112-8088
東京都文京区小石川4-6-10
URL
http://www.eisai.co.jp/ window open

※部署名、役職名、その他データは、取材時(2018年1月19日)当時のものです。

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